朝治武・谷元昭信・寺木伸明・友永健三編著『部落解放論の最前線――多角的な視点からの展開』(解放出版社、2018年)
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2015年7月から2018年3月にかけて、大阪人権博物館(リバティおおさか)で開催された部落解放論研究会(第1期)の34の報告の内、24本の論考が収録されている。2022年の全国水平社創立100周年を射程にいれて発足した研究会で、次のような呼びかけに始まった。
「急激なグローバル化が進行するなかで新自由主義とナショナリズムが日本を席巻し、政治や経済、社会のみならず部落問題をめぐる状況も重大な岐路に直面しています。全国水平社創立以来の部落解放運動は多くの成果を蓄積してきましたが、部落解放に向けては今日的段階をふまえて、なお整理すべき諸課題が山積しています。とりわけ歴史的視点はもとより広い視野に立って、被差別部落と部落差別の変容、部落差別の存続要因、主要な部落解放理論、部落解放運動のあり方、部落解放への道筋と展望、などについての新たな検討が求められています。」
本書は次の4部構成となっている。「歴史から探る部落問題」「部落と部落差別の現在」「部落解放の多様な課題」「部落解放と人権の展望」。
研究会開催中に、2016年12月、「部落差別の解消の推進に関する法律」が施行された。法律の名称に「部落差別」と明記され、「現在もなお部落差別が存在する」「部落差別は許されないものである」との認識を明記した法律である。救済機関としての人権委員会の設置等の具体策が盛り込まれなかったが、2002年の特別措置法の終了後、日本政府として初めて部落差別への取り組みを掲げた法律である。他方、障害者差別解消法、ヘイト・スピーチ解消法などとともに、個別分野における差別解消を謳う新しい「理念法」という法形態が整備され始めた。本書でも部落差別解消推進法の制定過程、意義、その限界が分析されている。